今回は、通勤手当の支給について悩まれている医院からのご相談です。
当院では、職員の通勤に必要となる費用の補助として実費相当額を通勤手当として毎月支給しています。支給ルールが曖昧なため、ルールを見直そうと考えていますが、そもそも、通勤手当を支給する義務はあるのでしょうか?
また支給する場合の注意点を教えてください。
医院が通勤手当を支給することは、法律で義務付けられているものではありません。よって、就業規則や労働契約書などで支給の有無や、支給する際のルールを定めることになります。
その際、通勤経路の考え方や、欠勤や休職した場合の取り扱いについても決めておくことが重要です。
通勤に必要となる費用を職員が負担するか、医院が負担するかは、法律で規定されていません。住む場所をどこにするかは職員の自由であることを考えると、必ずしも医院が支給する必要はないといえます。
ただし、大半の医院が支給していることを踏まえ、職員の待遇や求人への影響を考えると、支給することが望ましいのでしょう。
支給する際には、通勤手段(公共交通機関や自家用車など)や通勤経路に応じて、支給額の計算方法や支給上限額、特急券代の支給や高速道路の利用可否などを定めることが必要です。
また、欠勤や休職することで実際に通勤しない場合に、通勤手当の一部または全部を不支給とするといったルールを定めておくことが必要になります。
自宅から医院まで複数の通勤経路がある場合や、普段は自転車通勤をするものの、雨天時のみ公共交通機関やマイカーで通勤するようなケースもあります。このような場合に、通勤手当の取り扱いを考えておく必要があります。
通勤経路が異なる日が多少あるにしても、日常的に利用する通勤経路により通勤手当を月額固定額で支給する方法や、手間はかかるものの毎月の出勤実績や利用実績に基づき、単価×出勤日数で支給することも考えられます。
通勤手当は、引越しによる通勤経路の変更の他、交通機関の利用料金の改定、ガソリン単価の変動などによって、支給額が変更となることも想定されます。また、職員からの申請がなければ、正しい支給額を算出・把握できないこともあります。
変更となるときには、期限などを設け、職員自ら申請をしてもらうような流れを決めておくとよいでしょう。
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